友来たり
館長コラム
2021.08.03
令和3年8月号
友来たり
高校を卒業し東京の大学へ進学、そして就職した友が公民館を訪れてくれた。聞けば大病を患ったとのこと。入院中故郷を思い一冊の本を書き上げた。「直木賞」「芥川賞」こうした類(たぐい)の本ではないが屏風山の麓で暮らす三人の同級生と野良犬「むつ」との触れ合いを小学生の日常生活の思い出として描かれており、50年以上前にタイムスリップしたように当時の生活が思い出される。現在のように便利でない時代に生きてきた、しかし決して不便ではなかった当たり前の生活。この作品は稲津の町に対する郷土愛にあふれ、あの頃を懐かしむ文章がちりばめられている。夏の暑い日差しが照り付ける中、野山を駆け回り、小学校の校庭でボール遊びに明け暮れた。顔・腕などは真っ黒に日焼けし、膝、肘は擦り剝けて、それでも日暮れまで遊んだ。今思えば良き時代であった。
彼のように稲津の地を離れても故郷を好きでいてくれる。昔も今もこうした地であるよう稲津まちづくりは目指していかなければならない。改めて思い知らされた。
ちなみに彼は、病気を克服し元気である。コロナが収束したら昔話に花を咲かせたい。
(M)